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将来のプロダクトを見通す力を養う
プロダクト開発実習
――設計、設計検証、プロセスの確立、プロダクト試作・評価までを一貫して行う実習で、“ものづくり”を実感します。
01-1 電力変換用GaNトランジスタの作製とインバータ回路への応用
理論の知識だけでなく、試作における課題や問題解決能力も身についた。
DII一期生 CAI Wentao(電子工学専攻)
電力変換効率向上のための次世代パワーデバイスに応用できる新素材の候補として、窒化ガリウム(GaN)が検討されています。GaNはその材料特性から、高い絶縁破壊電圧や、システムの小型化、高温等の厳しい環境下での安定した動作など、シリコンよりはるかに優れた性能を発揮する可能性を持っています。
今回のプロダクト開発実習では、GaN MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)の基本的な製造プロセスや、評価方法、GaNインバータの回路設計を学び、実際に体験しました。
チームに参加したメンバーのほとんどが異なる専攻だったため、難しい点もありましたが、GaN MOSFETの完全な構造のプロセスを完了しました。
本実習では、理論的な知識だけでなく試作における課題や問題解決能力についても学ぶことができ、半導体専攻の私たちに全く新しい視点を与えてくれました。
01-2 デジタルものづくりによるハンググライダーモデルの作製とその制御実習
エンジニアリングの楽しさを味わい、イノベーティブなプロダクトについて考えた。
DII一期生 釣本浩貴(電子工学専攻)
姿勢制御によって長距離の滑空が可能な飛行ロボットを作製しました。ICによって、加速度、ジャイロ、地磁気の9軸センサのデータを基に飛行中の機体の姿勢を算出し、その結果を基にサーボモータを用いて尾翼を動作させ、機体を水平かつ進行方向に真っすぐになるよう制御します。これらを随時、フィードバック制御することによって、飛行ロボットは常に適切な姿勢を保ち続け、長距離の滑空が可能となります。主翼の骨組みとノーズコーンは3D CADで設計し、3Dプリンタで印刷して作製しました。
私自身は電子工学専攻で航空工学に関する知識をほとんど持ち合わせていませんが、異分野における経験を積むこともプロダクト開発の上で非常に重要であると考え、積極的に取り組みました。製作期間が短く十分な最適化が行えなかったため、機体の飛行テストでは、十分な滑空距離は得られませんでした。しかし、3D CADや3Dプリンタの扱い方や、設計手法を学ぶ貴重な機会が得られただけでなく、全くの異分野において苦戦し、失敗を重ねながらもプロダクトを形にしていく経験によって、エンジニアリングの楽しさを味わい、そしてイノベーティブなプロダクトとはどのようなものなのかを考えました。
01-3 エネルギーハーベストデバイスを実装したIoTセンサ開発
実際に動くプロダクトを製作し,学んだこと
DII一期生 福嶋岳(航空宇宙工学専攻)
太陽光や振動など身の回りの様々なエネルギーを電力に変換する技術であるエネルギーハーベストに関して学び、有機・無機材料を使用したハイブリッド太陽電池モジュールを作製しました。グループのメンバー4名はそれぞれ専攻が異なり、新たな分野での学習に苦心しましたが、協力して知識を共有しました。同時に太陽電池で動作させるIoTセンサについても、グループ全員が異なる見方から計測能力の評価、消費電力の見積りを行い、センサを駆動する太陽電池に必要な効率や面積を定量的に検討しました。
本実習では専門の知識を有する方々の協力を得て自作プロダクトの動作に成功しましたが、今後はそれぞれの研究シーズを活かしたこれまでにない新しいプロダクトを製作することを目指していきます。プロダクト開発実習で養った、自分と異なる分野に長ける人と協力する経験、定量的な検討により最終プロダクトから各要素に求められる仕様を決定するスキル、およびシステムとして各要素を組み合わせ、プロダクトとして正常に動作させる経験は研究だけに没頭する学生生活では得られない貴重なものであり、今後の活動にとって大いにプラスになると確信しています。