東海地区の起業家育成の拠点であるTongaliプロジェクト(文部科学省平成29年度次世代アントレプレナー育成事業に採択)が主催する「Tongaliビジネスプランコンテスト」にDIIプログラムの学生チーム3組が応募し、いずれも入賞しました。学生たちはこれを一つのステップとして、プランの実現に向けて大きく動き出しています。
一期生2チームのメンバーに、プログラムコーディネーターの天野浩教授が聴きました。
*松山仁は今回欠席
受賞ビジネスプラン
「ProGlass~どんな波長帯域でも使えるレーザー保護メガネ~」
- 受賞 Tongali賞第3位/なごのキャンパス賞/NEDO賞/オーディエンス賞
- チームメンバー 犬飼大樹 青島慶人 山田高澄 福嶋岳
「YOGA-interact-online」
- 受賞 SMBC日興証券賞/NEDO賞
- チームメンバー 松山仁 青島慶人 山田高澄
「スタートアップを目指している僕たちにとって、時代に乗っている感はすごくありました。」
天野
Tongali ビジネスプランコンテスト入賞、おめでとうございます。
全員
ありがとうございます!
天野
コロナ禍ですが、みなさんはこの状況をどうとらえていますか?
青島
DIIプログラムはどんなプロジェクトを進めてもいいのですが、大きく分けると、ものづくりとソフトウェア開発の2つです。この4人で進めている「ProGlass」はものづくりなので、集まってやることができなくて、いったんストップしました。
山田
でも様々なツールやビジネスが急に出てきて、スタートアップを目指している僕たちにとって、時代に乗っている感はすごくありました。逆に今がチャンスかなと。
犬飼
僕はけっこう意識が変わりました。大企業が倒産したり、社員を何万人も解雇したりした。そういう情勢を見ていると、そもそも「安定」という言葉がもうあまり通用しない。そういう時代を乗り切っていくには、自分の手かずを増やしていくことが、将来的に一番安定するのかなと。
そういう意味では、このように自分たちでビジネスを考えて、実際に何が売れるか作ってみるのも経験の一つとしてすごくいいなと思って、むしろ貪欲に取り組んでいく方向でいきたいと考えています。
福嶋
メンターの方々は、いつも、問題は何? 何を解決したい? 誰が何に困っている? と言われます。で、4月にこういう状況になって、いろいろみんなが困っていることがわかった。そういうことを解決する。それをフットワーク軽くどんどんやっていける人が、これからの社会を作っていくのかなと実感しました。
「複数の人間でやった方がより理想に近づけますか?」
「それは圧倒的に違います。」
天野
「ProGlass」はQE1で犬飼さんが発表していますね。今回のチームはその時にはできていましたか?
青島
はい。QE1もあるため、そろそろ何かしらチームを組んでやってみたらということで、Deployer(ビジネス起業者)、Innovator(プロダクト開発者)、Investigator(シーズ創成者)が組んでチームを作りなさいと指示がありました。そうはいっても、当時はまだそれぞれ特徴的な専門技術を持っているわけではありませんでした。だったら仲の良いメンバーで関わった方が面白いものができるんじゃないかと、まずはこの4人でチームを組みました。
犬飼
その時にはまだテーマは決まっていなくて、みんながこういうのをやりたいとか、技術的に解決できればいいというのを持ち寄って話し合い、「とりあえず、いま現実的にできそうなものはどれか」と。「じゃあ、レーザーゴーグルに手を付けてみますか」ということから始まったのです。
天野
みなさん、学位を取るために研究して論文を書く一方で、DIIプログラムでの活動もしている。負担はどうですか?
青島
負担は確かにありますが、それより、例えばある人の研究が急に忙しくなってDIIプログラムに対してモチベーションが下がると活動が滞ってしまう。チームの4人がどれだけやる気を維持できるかというのが重要です。今のところはそれが何とか上手くできているから、僕はあまり負担に感じていません。
天野
やはり一人でやるよりは複数の人間でやった方がより理想に近づけますか?
犬飼
それは圧倒的に違います。
「今は僕らの活動のサポートの一部がDIIプログラムであり、名古屋大学であり、NEDOでありという感じ」
天野
受賞して終わりではないですよね。これからどうします?
犬飼
むしろ始まったばかりという感じです。僕らは博士課程の学生ですが、研究だけというのはあまり面白くない。工学に精通しているけれど経営も知ってるという、二刀流の考え方ができる方がいい。そういう意味でも、この4人で会社を作るところまでやりたいと考えていて、名大の産学連携本部とも相談しています。
天野
いいですね。日本全国、あるいは世界にチャレンジしてみたりしませんか。
青島
NED TCPの選考に入っていて、メンターの方とプランを再検討している最中です。
犬飼
もともとはDIIプログラムの活動という感じでしたが、今は僕らの活動のサポートの一部がDIIプログラムであり、名古屋大学であり、NEDOでありという感じで、どんどんサポーターが増えて、領域が大きくなっているという実感はあります。
天野
となると、いま一番足りないなと思っていることは何ですか。
山田
人材かな。
犬飼
あと、お金ですね。お金は大切です(笑)。もっとクオリティの高いものにしようとすると、製作費用がとんでもないものになってしまって、僕らでは賄いきれない。
青島
レーザーゴーグルでディスプレイって重要なんです。でも、外注すると数千万する。それで、市販の流用できるサイズを分解して配線し直してというのを考えるわけですけど。
天野
VRではだめなの?
犬飼
だめですね。技術的にはこれで行けるだろうと思っていても、現実化しようとするとお金が全然足りない。理想型を作るのは現状難しいです。
専攻や分野を超えた人のつながりが、イノベーションを創出する
天野
なるほど。次のステップへ行くためにはどうしますか。投資家が必要ですね。
犬飼
コンテストに出る理由はそれもあって、できるだけ多くの人の目に触れて、知名度を上げていくのはすごく大事だと思っています。知ってもらって、協力してくれる投資家やメーカーの方が出てくるというのが理想です。
天野
異分野の人とのつながりですね。
青島
専門的な方とのつながりという意味では、DIIプログラムは非常に良いと思っています。レーザーゴーグルの開発では、先生方にご紹介いただいて、名大の情報学研究科の先生にお話をうかがって、技術的にかなり参考になりました。
犬飼
医学部の眼科や形成外科の先生もご紹介いただいて、実際に医学的な分野でニーズがあるかとか、目に対するダメージで注意するべきことなど相談しました。
青島
形成外科の先生から、しみ抜きやほくろ取りにもレーザーを使っていて、レーザーゴーグルをつけると見えにくい。ちゃんと見えるものがほしいというニーズをいただいて、それをビジネスコンテストのプランに入れたところ、けっこう高く評価された。そういうヒアリングが必要だと思います。
天野
現場を知り、専門家のご意見を聞くということですね。
青島
それも、もともとはDII、GTR、CIBoGという名古屋大学の3つの卓越大学院の交流会に参加して、そこをたどってお話を聞かせていただいたんです。
天野
そういうコネクションができる場があることは大きいですね。
青島
「YOGA」もプロのヨガのコーチの方につないでいただいて、そのヒアリングから生まれたものです。その方には、今もチームで加わっていただいています。
天野
「YOGA」、売れそうですけどね(笑)。「ProGlass」は確実に売れるんだけど、研究室に入るものなので、そう数は多くないかな。
犬飼
小さいところから大きく攻めていくというのはこの手のスタートアップは基本だと思いますけど、とはいえスタートダッシュの段階での販売台数は、僕らが試算しても少ない。最初どのくらい利益が上がるかは、けっこう難しいところがあります。
天野
まあ、でも、楽しみです。期待しています。
(2020年11月17日収録)