DIIプログラムの講義から生まれた二期生のチームが、「Tongaliビジネスプランコンテスト」に応募、入賞しました。身体が動かせず、発声も難しい難病患者のために、指を動かそうとするときに流れる微小な電流をセンサーで検出し、その神経信号を文字入力するソフトウエアの開発プランでした。「ゴールは困っている人を助けること」という強い思いを持っています。
チームメンバー
- 星野聖奈(物質科学専攻)【中央】
- 林楓昌(マイクロ・ナノ機械理工学専攻)【右】
- 平野流(情報・通信工学専攻)【左】
受賞ビジネスプラン
「神経信号を用いた難病患者向けコミュニケーションツール」
受賞・大和証券賞
Q. 3人の「open sesame」はどんなチームですか?
林
プランのアイデアは、星野君が授業で出したものです。
星野
林君とは発表するグループが同じでした。僕たちは、アイデアは持っているけど自分たちでものを作れない。技術を持っている平野君に「協力してくれないか」と頼んだんです。
平野
授業で面白そうだなと思っていたので、誘われて、ぜひやりたいと。3人の中で役割分担もできて、良い感じにチームができています。星野君はチームをまとめてくれて。
林
僕はハードウェアのテストをします。
星野
例えば僕が「こうやればいいんじゃないの」と思ってるアイデアと、平野君のアイデアと林君のアイデア。どれも解は近いのですが、アプローチの仕方が全然違う。そうすると、より適したもの、より独創的なアイデアが生まれると思う。そういう意味で、全員専攻が違うメンバーでやれたのは大きいと僕は思っています。
Q. これからも製品の開発は進めていきますか?
平野
実際に中指と人差し指と親指の動きをこのデバイスでとることができて、それを文字入力に反映することに成功しています。しかし、まだ患者さんのテストは行えていません。
林
目標はALSなどの患者さんが使えるようにすることです。ALS患者さんは神経の病気なので、どのぐらいの強度かやってみないとわかりません。コロナが緩和したら実際に患者さんと連絡をとって、実践的に使えるようにやってみます。
平野
患者さんに合わせてチューニングできるようにして、実装できればと思います。
星野
今、患者さんのコミュニケーションツールは目線入力しかない状況です。体の状態に合ったいろいろな表現方法があるのが患者さんにとって一番いい。僕らがこういうものを作ることで患者さんが選択できるし、価格競争が生まれることによって適正な価格になる、ということでやっていきます。
Q. 今後やっていきたいこと、大切にしたいことは?
星野
会社で働く前に、会社はどうやってできているのか、どうやってビジネスが生まれるのか、身をもって体験してから社会に出た方が、自分の人材としての価値を高めるだけじゃなくて、僕自身も能動的に社会に対して働きかけることができるかなと思っています。
ですから、ぜひともDIIプログラムでは会社を作る。このアイデアで作れるかわかりませんが、できるところまで実際にチームでやってみたい。体験して学びたい。それが目的でDIIプログラムに入りましたから。
林
卒業したら仕事は、基本的にエンジニアとしてプロダクト開発。でも実際に開発する際には技術だけではなくて、市場や客のニーズも考えなければならない。それができるようにするにはビジネスの知識が必要です。DIIプログラムでのこうした試みは、小さい会社みたいな感じです。
これをどのような技術で実現するかだけじゃなくて、実際にこの商品を買う患者さんがどのくらいいるか、どのようにこの商品が患者さんにつながるか、値段とコストなど、いろんなことを考えなければならない。それがけっこう重要だし、今は楽しいと思っています。
平野
DIIプログラムは、自分の尖った部分をうまく作っていける恵まれた環境を作ってくれています。特にアントレプレナーシップ教育は僕の中ではすごく良かった。
DIIプログラムで博士課程までいくことで、選択肢が増える。例えば研究者の道も、事業化する道もある。いろんな選択肢があるなかで、自分は、将来的にはまずは人生の5年、10年賭けてもいいくらい、自分の好きなことをやって事業化できたらいいなと思っています。
*平野流は座談会当日、大学に来ることができなかったためリモートで参加